医療費控除は領収書なしで申告できる。5年遡れる仕組みと、勤務医家族が使いにくい本当の理由
2026年5月26日

医療費控除の説明は、病院では看護師や事務が患者さんに行っていることが多い。「自分には関係ない」と思っている医師も多いはずだ。
でも、患者さんから「医療費控除って使えますか?」と聞かれたとき、答えられる医師でありたい。そして自分の家族にも、制度を正しく使える知識があるほうがいい。
勤務医が自分で申告する機会はしばらくないかもしれない。それでも、仕組みを知っているかどうかで、患者さんへの向き合い方は変わる。今日は基本から落とし穴まで、ひとつずつ整理する。
💬 医療費控除って何ですか?

チワゴ
医療費控除って聞いたことはあるんですけど、よくわかっていなくて。そもそも何ですか?

どくたろう
簡単に言うと、1年間にかかった医療費が一定額を超えたら、その分を所得から差し引いて税金を減らせる制度だよ。

チワゴ
一定額って、いくらですか?

どくたろう
年間10万円超が基準。10万円を超えた分に自分の税率をかけた金額が、税金から戻ってくる。

チワゴ
じゃあ去年、家族で病院にたくさん行ったんですけど、申告できたかもしれないってことですか?

どくたろう
そう。しかも申告していなくても、過去5年分まで遡って申告できる。損したままにしている人が多いポイントだ。

チワゴ
5年!?知らなかったです。
ℹ️ 医療費控除の基本
- 年間の医療費が10万円超(または所得の5%のどちらか低い方)で申告できる
- 生計を一にする家族全員分を合算できる
- 過去5年分まで遡って申告可能
- 還付額の目安:(医療費 − 10万円)× 自分の税率
💴 戻ってくる金額はいくら?

チワゴ
実際にいくら戻ってくるんですか?

どくたろう
たとえば年間30万円の医療費がかかった場合、10万円を引いた20万円が控除の対象になる。そこに自分の税率をかけた金額が還付される。

チワゴ
税率って人によって違うんですよね?

どくたろう
そう。所得によって変わる。

チワゴ
所得が高いほど、医療費控除の効果も大きいんですね。

どくたろう
そういうことだ。
📋 対象になるもの・ならないもの

チワゴ
どんな医療費が対象になるんですか?

どくたろう
意外と知られていないものも多いから、整理するよ。

チワゴ
インプラントや出産費用、ICLなどはどうですか?

どくたろう
項目によって対象になるものとならないものがある。ただ、「どうせ対象外だろう」と最初から諦めるのはもったいない。高い医療費を払ったときは、まず「これは対象になるかもしれない」と思って調べてみることが大事だ。

チワゴ
調べずに損しているケースもあるんですね。

どくたろう
そう。解釈によって変わるものもあるから、国税庁のサイトや税理士に確認してみることをすすめる。
ℹ️ 市販薬はセルフメディケーション税制へ
市販薬は通常の医療費控除の対象外ですが、対象の市販薬(スイッチOTC)を年間1万2千円超購入した場合、セルフメディケーション税制が使えます。ただし通常の医療費控除との併用はできません(どちらか選択)。
📱 申告方法:領収書がなくても大丈夫

チワゴ
申告したいんですけど、領収書を捨ててしまっていて…

どくたろう
実は今はマイナポータルを使えば領収書なしで申告できる。医療機関の受診履歴や支払い金額のデータが自動で取得できるようになっている。

チワゴ
それは便利ですね!どうやってやるんですか?

どくたろう
手順はこうだ。

チワゴ
思ったよりシンプルですね。
⚠️ マイナポータルの落とし穴

チワゴ
マイナポータルで全部自動でできるなら、特に気をつけることはないですか?

どくたろう
2つ注意点がある。
① 家族分の連携忘れ
マイナポータルは家族それぞれのマイナンバーカードを連携しないと、その人の医療費データが取得できない。配偶者や子どもの分を連携し忘れているケースが多い。
② 12月分のタイムラグ
12月に受診した分のデータは、翌年1〜2月頃にならないと反映されない。確定申告の期限(3月15日)までにデータが間に合わないことがある。

チワゴ
12月に大きな手術をした年は注意が必要ですね。

どくたろう
そう。12月分だけは領収書を手元に保管しておくと安心だ。
⚠️ 申告を忘れていた人へ
医療費控除の還付申告は過去5年分まで遡れます。「去年申告し忘れた」「数年前に大きな手術をした」という場合でも、今から申告できます。マイナポータルでも過去の医療費データを確認できます。
🏥 勤務医家族が医療費控除を使いにくい理由

チワゴ
先生は医療費控除を申告していますか?

どくたろう
実はしたことがないんだ。

チワゴ
え!?医師なのに!?

どくたろう
理由がある。勤務医は「高額療養費制度」に加えて、「付加給付金」という制度が使える職場が多い。これによって自己負担が月25,000円程度まで下がってしまうんだ。

チワゴ
それってどういうことですか?

どくたろう
たとえば子どもが手術をして、本来の医療費が50万円かかったとする。高額療養費で自己負担の上限まで下がって、さらに付加給付金で25,000円まで下がる。年間を通じてもこの自己負担が10万円を超えないことが多い。

チワゴ
制度が充実しているせいで、医療費控除が使えないんですね。

どくたろう
そういうことだ。高額療養費で戻ってきた分は医療費控除の計算から引く必要があるから、実質的な自己負担はさらに小さくなる。
ℹ️ 高額療養費と医療費控除の関係
医療費控除の計算は「実際に支払った額」が基準です。高額療養費や付加給付金で戻ってきた分は差し引いて計算します。
例:医療費50万円 → 高額療養費で自己負担上限まで減額 → 付加給付金でさらに25,000円まで減額 → 医療費控除の対象は25,000円
📌 勤務医家族でも申告すべきケース

チワゴ
勤務医の先生には医療費控除は関係ないんですか?

どくたろう
いや、申告すべき年もある。具体的にはこんな年だ。
- 出産があった年:分娩費用から出産育児一時金(50万円)を引いた残りが対象
- 歯科治療が多かった年:インプラントや子どもの矯正は高額になりやすい
- 大きな入院と他の医療費が重なった年:付加給付金の対象外の医療費も合算できる
- 通院交通費が積み上がった年:意外と盲点になりやすい

チワゴ
出産の年は特にチェックが必要なんですね。

どくたろう
出産に限らず、「今年は医療費がいつもより多いな」と感じた年は、一度計算してみるといい。申告できるかどうかは調べてみないとわからないし、調べるだけならタダだ。

チワゴ
損して気づかないより、一度確認する習慣をつけた方がいいですね。

どくたろう
そういうことだ。
⚠️ 税理士に任せている人へ
税理士は「依頼されたこと」はやってくれますが、医療費の領収書を渡していなければ動いてくれません。「医療費控除の申告もお願いしたい」と一言伝えること、そして医療費のデータを渡すことが必要です。任せているから大丈夫、という思い込みには注意が必要です。
📝 まとめ

どくたろう
今日の話をまとめると:
- 年間医療費が10万円を超えたら申告できる(家族合算でカウント)
- 領収書がなくてもマイナポータルで申告できる
- 家族分の連携と12月分のタイムラグに注意
- 申告し忘れていても、過去5年分まで遡れる
- 勤務医は高額療養費+付加給付金で10万円に届きにくいが、出産・歯科が重なる年は要チェック
- 税理士任せの人も「医療費の話をしているか」確認を

チワゴ
なんとなく難しそうと思っていたけど、マイナポータルを使えばそこまで大変じゃないんですね。

どくたろう
そう。やらずに損している人が一番多い控除のひとつだと思っている。まずマイナポータルで家族分の連携ができているか、そこから確認してみてほしい。
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