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医療費控除・確定申告

老後の医療費はいくら必要か。2026年改定で「上限」がはっきりした話

2026年5月21日

老後の医療費はいくら必要か。2026年改定で「上限」がはっきりした話

老後の医療費、いくら用意すればいいかわからない——そう感じている方は多いと思います。

実は、老後の医療費には「アガリ」があります。どれだけ病気をしても、生涯で払う医療費の自己負担には上限がある、ということです。

2026年8月の高額療養費制度の改定によって、この「アガリ」がはじめて年間単位でも明示されます。老後のお金を考えるうえで、知っておいて損のない内容です。

高額療養費制度とは

以前の記事で、高額療養費制度の基本的な仕組みと、ぼくが医療保険に入っていない理由をお話しました。

→ 医師が医療保険に入らなかった理由はこちら

今回の記事では、2026年8月の具体的な改定内容と、老後の医療費の「アガリ」という新しい視点をお伝えします。

チワゴ

チワゴ

前の記事を読んで、月9万円以内に上限があるならたしかに保険はいらないと思いました。でも、2026年8月に制度が変わるって書いてあって。具体的にどう変わるんですか?

どくたろう

どくたろう

よく読んでくれたね。前回は「2026年に上限が上がる」とだけ書いたけど、今日はその具体的な数字と、もうひとつ大事なポイントを話そう。

チワゴ

チワゴ

もうひとつ?

どくたろう

どくたろう

年間の上限が、初めて設けられる。月の上限は知っていても、年間でいくらになるかを知っている人は少ない。これが老後の医療費を考えるときに、すごく重要になってくる。

2026年8月の改定内容

改定のポイントは2つです。

  • ① 月の自己負担上限が約7%引き上げ
  • ② 年間の自己負担上限が新設(これは初めての制度)

①は単純に上限が上がるので、負担増に見えます。ただし、医療費全体の物価上昇を考えると、制度を維持するための調整という側面もあります。

②の年間上限の新設は、「1年間に医療費がどれだけかかっても、この金額以上は払わなくていい」という安心感につながります。これは今回が初めての試みです。

年収別の上限額(改定前→改定後)

年収ごとに上限額が決まっています。以下は月の上限額の比較です。

年収のめやす 改定前(〜2026年7月) 改定後(2026年8月〜)
約1,160万円〜 252,600円+1% 272,200円+1%
約770万〜1,160万円 167,400円+1% 180,500円+1%
約370万〜770万円 80,100円+1% 85,800円+1%
〜約370万円 57,600円 62,100円
住民税非課税 35,400円 38,100円

「+1%」とは、医療費の総額が一定額を超えた場合に、超えた分の1%を追加で負担するという意味です。高額な治療ほど上限が少し上がる仕組みになっています。

チワゴ

チワゴ

先生の場合だとどうなりますか?

どくたろう

どくたろう

後期研修医のころは770万〜1,160万円の区分だったけど、幸いにして今は一番上の区分で働いているよ。月の上限は約27万円になる。

チワゴ

チワゴ

それって、すごく高くないですか?

どくたろう

どくたろう

現役のうちはそう。でも老後はどうなるか。年収ではなく、年金収入で区分が決まる。それが大事なポイント。

老後の医療費の「アガリ」を計算する

老後に年金だけで生活するようになると、高額療養費の区分が下がります。

日本の平均的な年金受給額は、一人あたり年間100〜175万円が目安です。この場合、高額療養費の区分は「〜約370万円」に該当します。改定後の月の上限は62,100円、年間上限は約37万円です。

📊 老後の医療費「アガリ」試算

  • 老後の年金収入(年間):約175万円 →「〜約370万円」区分
  • 年間の自己負担上限:約37万円
  • 定年後35年間(65歳〜100歳)の累計:37万円 × 35年 = 約1,295万円

これが、生涯で医療費として払う可能性がある金額の「アガリ(上限)」です。

実際には、健康な年もあれば、上限に達しない年もあります。あくまで「最大でもこれだけ」という上限の目安です。

2026年8月からは年間上限が明示されるため、この「アガリ」がより計算しやすくなりました。

月5,000円の医療保険料をオルカンに回すと

ここで、少し視点を変えます。

医療保険の保険料は、一般的に月3,000〜8,000円程度です。仮に月5,000円の保険料を、40年間払い続けるとします。

この月5,000円を、同じ40年間、オルカン(全世界株式インデックスファンド)に積み立てたらどうなるでしょうか。

📈 月5,000円 × 40年間の積み立て試算(年利7%想定)

  • 積立期間:40年間
  • 月額:5,000円(年間6万円)
  • 想定年利:7%(オルカンの長期平均の参考値)
  • 試算結果:約1,197万円

これは老後の医療費「アガリ」の約1,295万円に、ほぼ一致します。

チワゴ

チワゴ

偶然ですか?それとも計算して合わせたんですか?

どくたろう

どくたろう

偶然だよ。でも、この一致が伝えたいことを全部表している気がした。

チワゴ

チワゴ

どういう意味ですか?

どくたろう

どくたろう

医療保険は「病気になったときにもらえる場合ともらえない場合がある」。でも、同じ月5,000円をオルカンに積み立てるだけで、老後の医療費の上限にほぼ届く金額が作れる。しかも確実に。

チワゴ

チワゴ

保険は不確実で、投資は(長期なら)より確実ということですか。

どくたろう

どくたろう

そう。もちろん投資にはリスクがあるし、保険が完全に不要とは言い切れない。でも「保険があるから安心」ではなく、「数字で考えてから選ぶ」という視点を持ってほしい。

→ オルカンをNISAで積み立てる方法はこちら

⚠️ 注意点

投資の年利7%はあくまで過去の長期平均を参考にした試算です。将来の運用成果を保証するものではありません。また、医療保険が必要かどうかは個人の状況によります。この記事は保険の解約を勧めるものではありません。

付加給付金という制度もある

高額療養費とは別に、付加給付金という制度があります。

これは、勤務先の健康保険組合が独自に設けている上乗せの給付で、月の自己負担が一定額(例:25,000円)を超えた分を補填してくれる仕組みです。

大きな病院や企業の健保組合に加入している場合は、高額療養費よりもさらに手厚い保護を受けられることがあります。自分が加入している健保組合に「付加給付金はありますか?」と一度問い合わせてみるだけで、自己負担の見通しがさらに正確になります。詳しくはまた別の記事で紹介します。

まとめ

2026年8月の改定ポイント

  • 月の自己負担上限が約7%引き上げ
  • 年間の自己負担上限が新設(一般的な年金収入の場合、年約37万円)
  • 定年後35年間(65歳〜100歳)の医療費「アガリ」は最大約1,295万円
  • 月5,000円を40年間オルカンで積み立てると約1,197万円になり、アガリにほぼ一致する

「医療保険に入っているから大丈夫」ではなく、「高額療養費制度があるから、必要な備えを数字で考えられる」という発想が大切です。

老後の医療費には上限があります。その上限を知ることが、お金の不安を減らす第一歩です。

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