勤務医に不動産投資の営業電話が多い理由|「医師は融資が通りやすい」と「良い物件を選べる」は別物だった
2026年5月19日

病院の電話が鳴る。内線が転送されてきて出ると、「先生に折り入ってご相談が」——患者さんかもしれないと思って対応したら、不動産投資の営業だった。
研修医のころ、こういうことが何度も起きた。今では1秒で切る。でもそこに至るまでに、ぼくなりに考えてきたことがある。今日はその話をする。
- なぜ勤務医に不動産投資の営業電話が多いのか
- 研修医がなかなか断れない理由と、正しい切り方
- 節税マンションの仕組みと現実のリスク
- 「医師だから融資が通る」と「良い物件を選べる」はまったく別の話
- ぼくが「今はやらない」と決めた理由
📞 病院への電話、手口がエグい
営業電話は、まず病院の窓口を突破するところから始まる。患者を名乗る、事務を名乗る——そうやって受付をくぐり抜けて、内線につないでもらおうとする。
電話がつながると、切り口はだいたい3つだ。
- 「節税になります」
- 「資産形成になります」
- 「医師だからこそご紹介できる案件があります」
チワゴ
実は私も……患者さんだと思って転送したら業者だったみたいで、先生に怒られてしまって。。
どくたろう
それはチワゴちゃんが悪いんじゃないよ。患者さんや事務を名乗って窓口を突破しようとしてくるんだから、見分けるのは難しい。
チワゴ
でも、なんで医師にこんなに営業電話が多いんですか?
どくたろう
理由は4つある。①収入が高く、融資の優良顧客になる。②病院のホームページに名前・経歴・診療日がすべて載っている。③診療日は院内にいることがわかっているので、つかまえやすい。④医療一筋でビジネスの経験が少ない。これだけ条件が揃っていれば、業者からすれば格好のターゲットになる。
チワゴ
病院のホームページを見れば、いつ病院にいるかまでわかってしまうんですね……。
どくたろう
そう。名前も顔も経歴も、全部公開されている。医師という職業は、個人情報がほぼ筒抜けの状態で社会に出るんだよ。
😶 研修医がなかなか切れない理由
研修医のころ、ぼくは電話を切れなかった。
理由はシンプルで、「本当に患者さんだったらどうしよう」という不安があったからだ。研修医は病院の電話対応にもまだ慣れていない。怪しいと思いながらも、ぶった切ることへの罪悪感があった。
チワゴ
研修医の先生が怒られてしまうのも、なんか申し訳なくて。
どくたろう
そこを狙っているんだよ。「患者さんかもしれない」という医療者の善意を、話を聞かせるための入り口にしている。慣れれば1秒で切れるようになる。患者さんならもう一度かけてくれる。不動産の営業はかけてこなくていい。
🗓️ ぼくが断り続けた3段階の理由
不動産投資の営業を受けるたびに断り続けてきたが、その理由は時期によって変わっていた。
初期研修医のころ:医療に集中していた
お金より、医師として伸びることが最優先だった。不動産のことを考えるエネルギーがそもそもなかった。
奨学金を返済していたころ:余裕がなかった
卒後3年で360万円の奨学金を完済したが、返し終えるまでは投資を考える段階ではなかった。
お金ができてから:数字で計算した
ある程度余裕ができたとき、改めて仕組みを調べて計算した。その結果、「ぼくには難しい」という結論になった。
どくたろう
「やらない理由」は、時期によって変わった。でも結果的にずっとやらなかった。最終的には、計算した上で自分には向いていないと判断したからだ。
🏢 仕組みは理解できる。でも現実は?
節税マンションの仕組み自体は、理論上は理解できる。
不動産の減価償却費を経費として計上することで課税所得を下げる——これが基本的な構造だ。高収入の医師であれば所得税率が高い分、節税効果も大きく見える。
チワゴ
理論的には合理的に聞こえますね。
どくたろう
そう、理論上はね。でも問題は「最終的に何が残るか」なんだ。
問題① 負動産になるリスク
減価償却で節税しながら、最終的に残った物件が価値を失っていたら、節税した分より大きな損失になる。節税の恩恵を受けるには「物件の価値が維持される」ことが大前提だ。
問題② 空室リスク
入居者がいなければ、ローンの返済だけが続く。営業資料に書かれた収支計算は、満室前提の楽観的な数字であることが多い。
問題③ 理論値すぎる
数字の上では合う計算も、現実の管理コスト・修繕費・金利変動が加わると話が変わる。
チワゴ
節税はできても、物件が負動産になったら意味がないということですか?
どくたろう
そう。「税金を払うより不動産を買った方がいい」という話は、「良い不動産が買えること」が大前提になっている。その前提が崩れると、節税どころか損するだけだ。あまりにも理論値すぎると思った。
👂 成功者バイアスと「気づかない失敗」
飲み会で不動産投資の話が出るとき、うまくいっている話しか聞かない。失敗した人は話さない——これは当然のことだ。
チワゴ
周りで不動産投資をしている先生の話を聞くと、なんとなく良さそうに見えてしまいます。
どくたろう
成功者バイアスがかかっているんだよ。飲み会で聞く「不動産いいよ」は、うまくいった人の声だけを集めたサンプルだ。うまくいっていない人は黙っている。
もう一つ、見落としがちな「気づかない失敗」がある。
自宅を購入した後に転勤になり、貸せるかどうかで困る——という話は、勤務医の間で時々聞く。本人は不動産投資をしているつもりがないのに、転勤のたびに不動産オーナーとしての判断を迫られる。
チワゴ
自宅が不動産投資という感覚は、あまりないですよね。
どくたろう
そこが落とし穴だと思う。結果的に2拠点生活を余儀なくされている医師は少なくない。本人が納得して選んでいるなら全然いいんだけど、2拠点生活になるとお金の面ではどうしても不利になる。家賃と住宅ローンを両方払い続けるような状況は、長く続けるには重い。
チワゴ
先生はどうしているんですか?
どくたろう
ぼくは価値ある物件を選ぶ自信がないし、転勤のたびに病院の近くに引っ越している。気軽に気に入った物件を選べるのが、今の自分には合っている。不動産を持つということは、それだけキャリアの選択肢を縛ることにもなるんだよ。
🔑 核心——「融資が通る」と「良い物件を選べる」は別の話
ここが、ぼくが一番伝えたいことだ。
医師は属性が良いので、不動産投資のローン審査が通りやすい。これは事実だ。「医師だからこそご紹介できる案件がある」という営業トークも、この属性を利用している。
でも、「融資が通りやすい」ことと「良い物件を見極める能力がある」ことは、まったく別の話だ。
チワゴ
確かに。お金を借りられることと、良い投資判断ができることは違いますよね。
どくたろう
医師として一人前になって年収が上がると、融資が通りやすくなる。それは本当だ。でもそれは「医師として稼げるようになった」というだけで、「不動産投資家として良い物件を選ぶ能力がついた」わけじゃない。この2つをごっちゃにしてはいけないとぼくは思う。
💬 ぼくの結論
不動産投資自体が悪いとは思っていない。医師の属性をうまく活用して、資産を大きく増やした医師もいると思う。良い物件を見極める目があるなら、選択肢として否定はしない。
ただ、ぼくが考えていることはこうだ。
「良い医師になる能力」と「良い不動産投資家になる能力」は、まったく別の能力だ。医師として一人前になることに全力を注いでいる時期に、不動産投資の勉強にエネルギーを使う必要があるだろうか。
どくたろう
少なくとも一人前の医師になってから考えることを、ぼく自身はすすめる。医療に集中することが、今の自分にとって一番合理的な選択だった——それだけのことだ。
チワゴ
営業電話がきたときは、どう対応すればいいですか?
どくたろう
1秒で切る。患者さんならもう一度かけてくれる。
📋 この記事のまとめ
- 勤務医が狙われるのは、高収入・情報公開・ビジネス経験の少なさが揃っているから
- 研修医が断れないのは「患者かもしれない」という善意を逆手に取られているから
- 節税マンションは理論上は成り立つ。でも負動産・空室リスクが現実にある
- 飲み会の成功談は成功者バイアスがかかっている
- 「融資が通りやすい」と「良い物件を選べる」はまったく別の能力
- まず医師として一人前になることが優先——それがぼくの答えだ