出口で209万円の税負担。iDeCoを満額積み立てていた勤務医が、あえて減額した理由
2026年5月23日

iDeCoは「掛け金が全額控除される」節税制度として人気が高い。でも、出口の税負担まで計算している人は少ない。
ぼく自身、運用益が200万円を超えたタイミングで気づいた。このまま積み立て続けると、受け取り時に200万円超の税負担が発生する可能性があると。今日はその計算と、たどり着いた結論を正直に話す。
💬 iDeCoって、結局どうなんですか?

チワゴ
先生、前のお金の自動化の記事でiDeCoにも触れていましたよね。NISAの話のときも「iDeCoはまた別の機会に」って言っていたので、ずっと気になっていました。

どくたろう
よく覚えてたね。約束していたから、今日はiDeCoについて正直に話すよ。

チワゴ
先生はiDeCoに入っているんですか?

どくたろう
入っているよ。制度ができてすぐに職場に掛け合ったんだけど、病院で1番乗りだったみたい。事務の人も「こんなに早く希望者が来るとは思っていなかった」って感じで、「病院側が申請手続きを整えるので、しばらく待ってください」と言われたくらいだった。

チワゴ
先生が早すぎて、病院側が追いついていなかったんですね(笑)

どくたろう
我ながら気が早かったと思う。でもそれくらい、当時は積極的だった。

チワゴ
今はいくら積み立てているんですか?

どくたろう
今は月5,000円。最初は12,000円だったんだけど、一度20,000円に増やして、その後あえて減らした。

チワゴ
減らした!?NISAはオルカン1本に全力投球なのに、iDeCoは減額したんですか?

どくたろう
そう。理由がある。今日はそれを正直に話すよ。「iDeCoは満額積み立てるほど得」というのは、必ずしも正しくないんだ。
📖 iDeCoを始めたきっかけ

どくたろう
ぼくがiDeCoを始めた理由は2つある。
ひとつは、医師は転勤が多くて退職金が期待できないこと。同じ病院に長く勤め続けることが難しいから、自分で老後の資産を作るしかないと思った。
もうひとつは、当時はNISAの枠が今ほど大きくなかったこと。節税しながら運用できる枠として、iDeCoは魅力的だった。

チワゴ
なるほど。制度ができてすぐに動いたんですね。

どくたろう
そう。最初はみなし公務員として上限の月12,000円で始めた。制度改正で上限が20,000円に上がったタイミングで増額もした。
ℹ️ みなし公務員とは?
勤務医は「みなし公務員」として扱われる場合があり、iDeCoの掛け金上限が一般会社員(月23,000円)より低く設定されていました。2022年の制度改正で上限が月20,000円に引き上げられました。
📈 運用成績は?

チワゴ
実際、どのくらい増えましたか?

どくたろう
SBI証券の「DC外国株式インデックス・ファンド」で運用しているんだけど、現在の残高が約350万円。元本が約150万円だから、運用益が約200万円になっている。

チワゴ
元本の2倍以上に育ってる!すごい!

どくたろう
選んだ理由は、当時購入できる銘柄のなかで手数料が最安だったから。今も同じ銘柄を持ち続けているのは、手数料の安さに満足しているのと、切り替えの際に運用が止まる期間を避けたいからだ。
ℹ️ iDeCoの基本ルール(おさらい)
- 掛け金が全額所得控除(毎年の節税効果)
- 運用益が非課税
- 受け取り時に退職所得控除または公的年金等控除が使える
- 原則60歳まで引き出せない
⚠️ なぜ20,000円から5,000円に減らしたのか

チワゴ
運用成績がいいのに、なぜ減額したんですか?

どくたろう
成績がいいからこそ、減額したんだ。このまま積み立て続けると、受け取り時に大きな税負担が発生する可能性が出てきた。

チワゴ
税金?iDeCoって非課税じゃないんですか?

どくたろう
運用中は非課税だけど、受け取るときに課税される。一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が使えるんだけど、それを超えた分には税金がかかる。
🧮 退職所得控除とは何か

どくたろう
退職所得控除は、iDeCoの一時金を受け取るときに使える控除だ。加入期間が長いほど控除額が大きくなる。
退職所得控除の計算式:
- 加入期間20年以下:40万円 × 加入年数
- 加入期間20年超:800万円 + 70万円 × (加入年数 − 20年)

チワゴ
先生の場合はどうなりますか?

どくたろう
ぼくはあと25年後に退職予定で、そのときのiDeCo加入期間は約34年になる。

どくたろう
つまり、1,780万円までは非課税で受け取れる計算だ。
💸 月20,000円のまま続けたらどうなるか

チワゴ
1,780万円って、十分大きくないですか?

どくたろう
そう思うよね。でも計算してみると、足りなくなるんだ。
現在残高350万円を年利7%で25年運用すると:
350万円 → 約1,900万円
月20,000円を年利7%で25年積み立てると:
約1,518万円
合計:約3,418万円

チワゴ
3,418万円!?控除の1,780万円を大幅に超えてる!

どくたろう
超えた1,638万円が課税対象になる。退職所得は2分の1に圧縮されるから、約819万円に税率がかかる。
税負担の内訳(目安):
| 所得税(累進課税) | 約125万円 |
| 復興特別所得税 | 約2.6万円 |
| 住民税(10%) | 約82万円 |
| 合計 | 約209万円 |

チワゴ
月2万円積み立てて、出口で209万円も持っていかれるんですか…

どくたろう
毎年の掛け金控除で節税した分を、出口でまとめて取り返されるイメージだ。
⚠️「積み立てるほど得」とは限らない
iDeCoの節税効果は「掛け金の所得控除」だけではありません。受け取り時の課税も考慮しないと、積み立てれば積み立てるほど出口で損をする可能性があります。
🔢 5,000円に減額した場合の計算

チワゴ
5,000円ならどうなりますか?

どくたろう
計算するとこうなる。
現在残高350万円を年利7%で25年運用すると:
約1,900万円
月5,000円を年利7%で25年積み立てると:
約380万円
合計:約2,280万円
超えた分は500万円。退職所得に直すと250万円。
税負担の内訳(目安):
| 所得税(累進課税) | 約15万円 |
| 住民税(10%) | 約25万円 |
| 合計 | 約41万円 |

チワゴ
20,000円と比べると、約168万円も税負担が変わるんですね。

どくたろう
毎月の掛け金を減らしつつ、出口の税負担を大きく下げられる。これが減額した理由だ。
⚠️ 税額はあくまで目安です
税負担は退職時の他の所得や、その年の控除状況によって変わります。具体的な金額は税理士にご確認ください。
🏥 転勤が多い医師こそ要注意

チワゴ
退職所得控除って、勤続年数で変わるんじゃないですか?転勤が多いと不利になりませんか?

どくたろう
ここが医師にとって重要なポイントで、iDeCoの退職所得控除は勤続年数ではなくiDeCo加入期間で計算される。
だから、転勤で勤務先が変わっても、iDeCoを継続している限り加入期間はずっと積み上がっていく。

チワゴ
それは医師にとって有利ですね。

どくたろう
有利でもあるけど、逆に言うと加入期間が長くなるほどiDeCoの残高が大きくなりやすいということでもある。退職金がゼロでも、iDeCoだけで控除額を超えてしまう可能性がある。
ℹ️ 転職・転勤時の注意点
iDeCoは転職しても継続できますが、移換手続きを忘れると加入期間が止まる場合があります。転職時は必ず加入機関への連絡を忘れずに。
🤔 0円にしなかった理由

チワゴ
それなら、いっそ0円にすればよかったのでは?

どくたろう
iDeCoは掛け金をゼロにしても、口座管理手数料はかかり続ける。だから最低限の5,000円は続けることにした。節税効果を活かしながら、出口のリスクを最小化する落としどころとして選んだ。
📋 受け取り方の戦略

チワゴ
一時金と年金形式、どちらで受け取るんですか?

どくたろう
ぼくは一時金で受け取る予定。年金形式にすると「公的年金等控除」が使えるけど、公的年金と合算されるので計算が複雑になる。一時金なら退職所得控除でシンプルに管理できる。

チワゴ
自分に合った受け取り方を選ぶことが大事なんですね。

どくたろう
そう。iDeCoは「積み立て方」だけじゃなく、「受け取り方」まで含めて設計する必要がある。これが見落とされがちなポイントだ。
👨⚕️ 研修医の先生へ

チワゴ
研修医の先生がiDeCoを始めようとしていたら、どんなアドバイスをしますか?

どくたろう
正直に言うと、今から始めるならiDeCoはわざわざ使わなくていいと思っている。

チワゴ
えっ、先生は積極的に始めたのに!?

どくたろう
ぼくが始めた頃はNISAの枠が小さかった。でも今は新NISAで年360万円、生涯1,800万円まで非課税で運用できる。この枠をフル活用するだけで、老後の資産として十分な金額になる。

チワゴ
NISAだけで足りるということですか?

どくたろう
そう。iDeCoは資金が60歳まで引き出せない。受け取り時の税金計算も複雑になる。「控除を超えないように5,000円だけ始める」という選択肢もあるけど、考えることが増えてしまう。

チワゴ
お金の計算ばかりしていると、医療に集中できなくなりますもんね。

どくたろう
そう、本末転倒なんだ。まずは新NISAをフル活用する。それだけでいい。シンプルに考えることが、医師として長く働き続けるためにも大事だと思っている。
📝 まとめ

どくたろう
今日の話をまとめると:
- iDeCoの受け取り時は退職所得控除の範囲内に収めることが重要
- 転勤が多い医師は加入期間が長くなりやすく、残高が控除額を超えやすい
- 退職金がゼロでも、運用成績次第で控除額を超える可能性がある
- 積み立て額を調整することで、出口での税負担を大幅に減らせる
- 手数料のために最低限の掛け金は維持するのが現実的
- 今から始めるなら、新NISAをフル活用するほうがシンプルで賢い選択

チワゴ
「積み立てるほど得」という常識を、ちゃんと疑うことが大事なんですね。

どくたろう
そう。NISAと違ってiDeCoは出口で課税される。入口の節税だけを見て満額積み立てると、出口で思わぬ税負担が待っている。出口まで考えて設計するのが、医師のiDeCo戦略だと思っているよ。